生き物をめぐる話

自然、生物、生物学などの話題を取り上げます。

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生物学一般

 今回はエピジェネティクスについて考えてみましょう。 ジェネティクス とはgenetics、遺伝という意味です。それにエピがついてエピジェネティクス。エピとは外、追加などの意味があります。つまり本来の遺伝学が対象としていた遺伝子による遺伝現象以外の遺伝現象といえま

 前回ゲノム編集の技術面の話を、遺伝子組み換え実験とのアナロジーから説明しました。今回は、ゲノム編集により何が可能となったのかについて説明していきたいと思います。  ゲノム編集が目指したことは、生きた生物の任意の遺伝子に任意の突然変異を導入したい、という

 最近ゲノム編集という言葉を目にする機会が増えています。2回に分けてゲノム編集とは何か? 説明しましょう。 その前に遺伝子組換え技術の歴史を少し。 遺伝子の本体がDNAであることが判明し、試験管内でDNAを扱う革新的な遺伝子組換え技術が開発されました。こ

 前回、眼の誕生が後生動物の形態の進化に大きなインパクトを与えただろうとの説を紹介しました。今回はそれ以前、真核生物の誕生と進化のシナリオを描いてみたいと思います。この過程にはいまだ様々な説があり定説はありません。ここで述べるのはあくまで様々な仮説を筆者

 ここしばらく続けてきた有性生殖に絡んだ話は一段落して、今回は別の話題を取り上げたいと思います。 生物進化の謎の一つにカンブリア爆発があります。これはカンブリア紀の始まりに、多様な生物が一気呵成に現われたことを指します。ここで注意しておきたいことが2つあ

 これまで有性生殖は多様性を作り出す、という長期的なメリットがある為に保存されてきたという話をしてきました。単為生殖など有性生殖を失った生物も見つかりますが、それらは進化の袋小路に入り込んでしまった為に、早晩絶滅する運命にあるだろうと多くの人は考えてきま

 有性生殖の役割として若返り、とはよくいわれることです。何度か紹介していますが、ゾウリムシは無性的に分裂するだけでは老化して死滅します。しかし、2個体間で(場合によっては1個体でも)減数分裂とゲノムの交換、受精という有性生殖過程を経て若返り、分裂出来るよ

 前回は有性生殖の起源について話しました。今回は有性生殖の維持について話したいと思います。有性生殖は増殖の機構としては無駄が多いように見えます。しかし、ほとんどの真核生物はそれを維持しています。何故でしょうか?  有性生殖は普遍的に存在しますが例外もあり
『有性生殖がなぜ維持されているのか?』の画像

 前回、有性生殖は真核生物にのみ見られるとお話ししました。しかし原核生物にも似た現象があります。それが接合伝達です。大腸菌での例をみてみましょう。大腸菌には自身のゲノムとは別に小さな環状DNAを持っている場合があります。生存に必須ではありませんが、自立的に複
『有性生殖の起源』の画像

 前回真核生物の大系統について紹介しました。それは真核生物が細胞内共生により複雑化、多様化してきた歴史です。今回は真核生物のもう一つの重要な発明、有性生殖について見ていきたいと思います。 我々人類を含めて身の回りの生物には個体としての寿命があります。老化

 真核生物の生物群はどのように分類されるのでしょうか? 真核生物は非常に多様な生物を含み、かつ、非常に古い時期に分岐が起こったと考えられ、遺伝子配列情報をもってしてもはっきりした結論は出ていません。現在も精力的な研究が続いていて、日々その分類体系は変化し

 前回、生物の分類として真正細菌、古細菌そして真核生物の3ドメインに分かれる説を紹介しました。そして生物の初期段階の進化での一番大きな、そして興味深い謎が真核生物の誕生といえます。なぜなら動物や植物など生物の多様性を目に見える形で実感出来るのは真核生物の

 地球上には名前がついたものだけで200万もの生物種が存在します。さらに、その10倍ともいわれる種が存在するのではともいわれています。そうした全ての生物は約38億年前に地球上に自然発生した1種類の生物が長い年月をかけて分かれて進化してきたものと考えられてい
『生物の大系統(1)』の画像

 生物は進化します。進化というと単純なものから複雑なものへと思われるかもしれませんが、必ずしも複雑化することが進化の本質ではありません。例えば寄生生物などは進化の過程で体制を退化させてきています。このように進化という言葉には複雑化、向上という意味を含みま

 前回は体細胞での遺伝情報の変化ということが免疫系の形成に重要な役割を担っている事を見てきました。そしてそうした体細胞での遺伝情報の書換えが、脳の構造、機能にもなんらかの役割を持っている可能性があるのではないかというお話をしました。今回はそうした遺伝情報

 生物学の方法論など専門的な話が続きましたので、今回から最近の論文の内容に絡めてトランスポゾンの話をしてみたいと思います。論文はサイエンス(Science Vol. 340, 91-95, 2013)の 「Transposition-Driven Genomic Heterogeneity in the Drosophila Bain」というもので

 前回、逆遺伝学的なアプローチとして遺伝子が先に解っていてその機能を知るにはどうしたらいいかという話をしました。そして突然変異を得ることが最も確実な推奨される方向です。突然変異は放射線や突然変異原を与える事で誘導できます。しかしこれでは狙った遺伝子にのみ

 前回は遺伝子がどのように生物を支配しているかについて述べてみました。要は遺伝子はタンパク質の設計図であるという事です。そしてタンパク質こそが生物を成り立たせている屋台骨であるということです。 従来から酵素を中心としてタンパク質の研究は生化学を中心として

 21世紀は生物学の時代ともいわれています。それは20世紀の生物学の発展に由来しています。具体的には遺伝子という観点から生物現象を見ていこうという流れが決定的になったということでしょうか。 メンデルが遺伝の法則を報告したのは1865年。しかし、大きな反響

 研究上扱いやすい特定の生物に多くの研究者が研究を集中することで研究が進展するということはこれまでも行なわれてきました。そうした流れを特に意識してモデル生物という言葉が頻繁に用いられるようになってきました。但し、研究目的により適当な生物は異なりますし、各

 生物学は生物を対象とした学問です。しかし生物の何を知りたいかにより様々な学問分野に分かれていますし、それぞれの分野により、また研究者により対象とする生物も異なってきます。 例えば有名なメンデルの遺伝の法則というのがあります。メンデルは1884年(日本では明

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